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国際ロータリー 第2580地区中央分区

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「なぜ虫歯の治療にゴールド(金)を使うのか?!」

卓話 公開日 :

「なぜ虫歯の治療にゴールド(金)を使うのか?!」

卓話者:清水 雄一郎 会員

ゴールド(金)を用いたむし歯治療は、樹脂やセラミックスなどの歯と同じ色の修復法が普及した現在においても、最もむし歯の再発が少なく、長持ちする可能性が高い治療法である。治療手技に関しては、多くの先生方が様々な方法を提唱しているが、アメリカ・ワシントン州ファーンデールの開業医であった、リチャード・タッカー先生の治療法は、修復後40年経過症例においても、94.1%という高い生存率を維持しており、ゴールド修復の中でもとりわけ高い治療成績を残している。(Donovan T, Simonsen RJ, Guertin G, Tucker RV. Retrospective clinical evaluation of 1,314 cast gold restorations in service from 1 to 52 years. J Esthet Restor Dent. 2004;16(3):194-204. doi: 10.1111/j.1708-8240.2004.tb00034.x. PMID: 15597641.)

リチャード・タッカーゴールド修復学会(The Academy of R.V. Tucker Gold Study Clubs)という、タッカー先生の治療哲学及び手技を学ぶ勉強会があり、生涯歯を守れる可能性が高い治療に感銘を受けた私は、2010年に日本支部を設立した。また、現在は第2理事(2nd Councilor) として、学会本部の運営に携わっている。そこでの勉強経験、並びに日本での臨床経験を元に、今回の卓話を行った。

むし歯治療に使う詰め物は、お口の中で過酷な環境にさらされる。それは、梅干しやレモンと言ったアルカリや酸、冷たいアイスクリームから熱いお茶までの大きな温度変化、そして、かむ力や歯磨きと言った物理的な力まで幅広い。樹脂やセラミックスとは異なる、金属の中でも特にゴールドだけが持つ、それら過酷な環境に耐えるための特徴が5つある。

 

  1. 熱膨張率
    一般に物質は熱くなると膨張し、冷たくなると収縮する。他の歯科材料、例えば銀の詰め物は、歯と同じようには膨張、収縮しないため、お口の中の温度変化によって、歯と詰め物の間にわずかな隙間が出来てしまい、むし歯再発の原因となってしまう。しかし、ゴールドにおいては、熱膨張、収縮が極めて天然の歯に近く、その心配はご無用である。
  2. 展延性
    天然の歯は、毎日の食事や歯ぎしりによって、少しずつすり減ってくる。ゴールドは、天然の歯と同様にすり減ってくれる。これは、体の変化に合わせてゴールドも変化することで、治療後、数年経ってから起こりうる、かみ合わせからくる不快な症状が出る可能性も減らす。
  3. 硬さ
    適切に調合された金合金は、天然の歯に極めて近い硬さを有する。噛み合わせる反対側の歯を傷つけることなく、また、装着した歯を守ることにつながる。
  4. 研磨性
    金は、数ある歯科材料の中でも、最もなめらかに磨くことができる。表面が非常に滑沢であるので、食べかす・むし歯菌が表面に付きにくく、長期にわたり衛生的な状態を維持する。
  5. 化学的安定性
    ゴールドは酸化せず腐食せず、歯の色を変えない。詰めものの縁が着色することもなく、むし歯で失われた部分を長期にわたって補填することができる。

これらに加えて、卓話中には、多くの写真を用いて、タッカーテクニックに沿った実際の治療手順を紹介した。また、ウォレン・ジョンソン先生が修復した電子顕微鏡写真や、私の修復したカラー顕微鏡の写真を提示し、精密に製作されたゴールドは、歯とゴールドの直接接触が得られ、むし歯菌の入り込む余地がないことも紹介した。

タッカー先生の治療法を学ばずとも高いレベルの治療ができる才能ある歯科医師は存在するが、その数は多くない。しかし、タッカー先生の技術を学ぶことで、一部の才能ある者にしかできなかった最高品質の歯科治療を、どのような歯科医師であっても身につけることができる。また、その治療を患者に提供できるのは、日本だけでなく、世界の歯科医学の向上に意義あることだと考えている。

 

卓話公開日 2024年 9月30日

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