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モンゴルの政治・経済概況と日本との関係

卓話 公開日 :

「モンゴルの政治・経済概況と日本との関係」

卓話者:ジェトロ調査部中国北アジア課 廣田瑞生様

モンゴルは日本の4倍の広大な国土を持ち、人口は静岡県、経済規模は佐賀県とほぼ同規模の国である。モンゴルといえば、雄大な草原に遊牧民が家畜を遊牧しているといったイメージがあるだろう。確かに首都郊外には広大な草原が広がり、遊牧民が家畜を遊牧している光景も見られるが、首都ウランバートルでは新しいマンションや高層ビルが立ち並び、車で移動してショッピングモールで買い物をするなど、人々は都会的な生活を送っている。仕事を求めて都市部へ移住する人も後を絶たず、モンゴルの総人口約350万のうち約半数はウランバートルに住んでおり、都市化が急速に進んでいる。

<経済概況:急成長するモンゴル経済、背景には好調な資源輸出>

現在、モンゴルの経済は急成長している。2023年の実質GDP成長率は7.0%を記録し、新型コロナ前の2019年の5.6%を上回った。国民所得も増加しており、2023年第4四半期(10~12月)の1世帯当たり平均月間収入(名目値)は、前年同期比23.8%増の228万6,300トゥグルク(約10万7,456円)と大きく伸びた。7月の世界銀行の発表によると、2023年のモンゴルの1人あたり国民総所得(GNI)は4,950ドルとなり、上位中所得国入りを果たした(注1)。消費も拡大しており、2023年第4四半期の1世帯当たり月間平均支出(名目値)は前年同期比22.7%増の230万2,670トゥグルク(約10万3,203円)だった。

経済成長の背景には、資源輸出が好調なことが挙げられる。モンゴルは、石炭や銅といった資源が豊富にあり、南部には日本の年間石炭輸入量の約38倍の埋蔵量があると推定されるタバントルゴイ炭鉱や、世界最大級の銅の埋蔵量を誇るオユトルゴイ鉱山がある。モンゴルはこうした豊富な資源を輸出しており、2024年1~6月の対外輸出総額の88%が鉱物であった。中でも石炭は輸出全体の59%、銅は18%を占める主要な品目となっている。これら資源は主に中国に輸出されており、対中輸出のうち65%は石炭、20%は銅が占めている。モンゴルの輸出総額の約93%が中国向けである。今後の中国の石炭需要について、中国石炭輸送販売協会はインフラ投資の増加や製造業の回復を背景に石炭需要が伸び続けると予想しており、モンゴルからの輸入も高水準で続く可能性がいわれている。

<日系企業動向:モンゴルの経済成長は現地進出日系企業にも追い風>

モンゴルの経済成長は、日系企業のビジネスにも良い影響を与えている。2024年1~6月における日本の対モンゴル輸出額は前年同期比86.9%増の約869億円と急拡大している。内訳をみると、自動車が約8割を占めている。モンゴルでは日本の中古車が広く流通しており、街中では多くの日本車が見られる。現地の日系自動車販売会社は、モンゴル国民の所得向上に伴い、中古車から新車に需要が徐々にシフトするとみており、リーズナブルな価格の新車需要に対応したいと話す。

最近の日系企業の進出事例では、所得向上を背景に消費市場をターゲットにした事例が見られる。特に飲食業が増えている。留学や観光で訪日するモンゴル人が増え、日本食が身近な存在になっていることが背景にある。2019年には土鍋みそラーメン店「たけさん」がモンゴルでフランチャイズ展開した。モンゴルの所得水準からみれば安くない価格だが、富裕層を中心に連日満席に近い状況だという。最近では、2022年に吉野家がモンゴル1号店を開店、2024年7月にラーメンまこと屋や松屋が出店するなど、日本の外食産業の進出が相次いでいる。

<対日関係:文化交流、開発援助など幅広い面で日本との関係が強まる>

日本とモンゴルは経済のみならず、文化や歴史など様々な面で深い交流がある。近年はモンゴルを訪れる日本人が増えており、2024年1~9月に、日本からモンゴルを訪れた人は3万3,144人と、コロナ前の2019年を超えた。2023年にはモンゴルで日本のテレビドラマが撮影され、関連した旅行商品なども販売された。

日本を観光目的で訪れるモンゴル人も増えており、日本政府観光局(JNTO)の統計によると、2024年1~7月に日本を訪れたモンゴル人観光客の数、は前年同期比45.8%増の1万7,047人に達した。モンゴル現地旅行会社によると、昨今の所得向上により、観光ビザ取得の要件となる収入基準を満たす人が増えているという。

日本在住のモンゴル人は1万9,490人で、コロナ前の2019年時点(1万4,410人)を上回った。在留資格別では「その他」を除くと「留学」が最も多い。2024年6月に行われた選挙の結果、日本留学の経験者2名が副首相に就任するなど、日本留学経験者が様々な形で活躍している。

また、日本はモンゴルに対して多くの開発援助を実施してきた。2023年11月時点で、日本がモンゴルで実施した政府開発援助(ODA)支援額は累計3,690億円(注2)にのぼる。2021年には、日本の円借款によって建設された新ウランバートル国際空港が開港した。隣国の中国やロシアをはじめ、日本や韓国、トルコ、ドイツなどと定期便が就航しており、内陸国であるモンゴルの旅客・貨物輸送を支えている。インフラ整備のほかにも、ビジネス人材の育成や医療分野での支援なども実施しており、モンゴル社会の発展や生活の向上に寄与している。

昨今のモンゴルは、好調な資源輸出を背景に経済が成長し、国民の所得や消費も拡大している。日系企業にとっても、飲食業など新たなビジネスチャンスも拡大しており、ビジネス面での日本とモンゴルの協力は拡大していくだろう。さらに、観光や留学、開発援助などさまざまな面で、今後も日本とモンゴルの関係は強化されていくものとみられる。

 

(注1)1人当たりGNIが1,136ドルから4,465ドルまでの国・地域を下位中所得国、 4,465ドルから13,845ドルまでの国・地域を上位中所得国と分類している。上位中所得国の中で最下位のイランは4,680ドルとなっている。

(注2)円借款(借款契約ベース)、無償資金協力(交換公文ベース)、技術協力(予算年度の経費実績ベース)の合計。

 

卓話公開日 2024年 11月18日

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