「外国人技能実習生と共に創る未来の建設業」
卓話者:有賀 政人 会員
1.技能実習制度について
技能実習制度は、1993年に始まった制度で、途上国の人たちに日本の技術を学んでもらい、将来その国で役立ててもらうという、国際協力の側面が強いものでした。ところが、2008年のリーマンショック以降、人手不足が深刻になったこともあり、制度のあり方が変わってきました。技能実習生の受け入れ枠が増え、建設業や農業など、人手不足の業種を中心に、即戦力として期待されるようになりました。
この変化に伴って、中には実態が異なる受け入れ先があったり、技能実習生が厳しい労働環境に置かれたりといった問題も起きてしまいました。2017年には、こうした問題を解決するために制度が大きく見直され、監理団体が技能実習生の指導や保護をより徹底して行うことになりました。
技能実習制度は、当初の目的から変わってしまった部分もあります。しかし、今もなお、途上国の人たちに技術を学び、将来活躍してもらうという、国際協力の側面は残っています。
この制度が、より良い形で機能していくためには、受け入れ側の企業や監理団体が、技能実習生の人権を尊重し、適切な環境で技術を学べるようにすることが重要です。また、技能実習生本人も、受け入れ先の期待に応えるだけでなく、積極的に日本の文化や技術を学び、将来の活躍につなげていくことが大切です。
技能実習制度は、これからも変化していくでしょう。しかし、その根底にある国際協力の精神を忘れずに、より良い制度へと成長させていくことが求められます。
2.技能実習生の労働関係法令について
技能実習制度は、途上国の人たちに日本の技術を学んでもらい、母国に戻って活躍してもらうことを目的としています。そのため、技能実習生は、労働者として働くだけでなく、技術を習得することが主な目的となります。
技能実習生を雇う企業は、技能実習生に労働基準法を適用する必要があります。労働基準法は、労働時間を制限したり、最低賃金を定めたりするなど、労働者の労働条件を保護するための法律です。
また、技能実習生は、労働者派遣法の適用も受けます。労働者派遣法は、労働者派遣事業の適正な運営を確保し、派遣労働者の保護を図るための法律です。
技能実習生を雇う企業は、これらの法律を遵守し、技能実習生が安心して働ける環境を整える必要があります。
技能実習生は、労働者として働くだけでなく、技術を習得することが主な目的となります。そのため、企業は技能実習生が技術を習得できるよう、適切な指導や教育を行う必要があります。
技能実習制度は、途上国の人々の生活向上にもつながる重要な制度です。企業は、技能実習生を受け入れることで、国際社会貢献にもつながります。
技能実習生を雇う企業は、技能実習生が安心して働ける環境を整えるとともに、技能実習生が技術を習得できるよう、適切な指導や教育を行う必要があります。
3.出入国管理及び難民認定法について
まず、出入国管理とは、外国人が日本に入国したり、滞在したりする場合のルールを決めることです。例えば、観光で日本に来る場合はビザが必要ですが、これは出入国管理の一環です。また、日本に留学したり、働いたりする場合も、それぞれの目的に応じた在留資格を取得しなければなりません。
次に、難民認定についてですが、これは迫害から逃れてきた外国人を保護するための制度です。例えば、母国で戦争や人権侵害を受けている人が、日本に避難してきた場合、難民として認められると、一定期間、日本に滞在することができます。
出入国管理と難民認定は、どちらも国際社会の中で重要な役割を果たしています。出入国管理は、国境を越える人の流れをコントロールし、社会の安全を守るために必要です。一方、難民認定は、迫害から逃れてきた人々の人権を守るために欠かせません。
4.外国人技能実習生の現状と課題
現在、日本では多くの外国人技能実習生が働いています。彼らは、日本の技術を学び、母国の発展に貢献することを期待されています。しかし、実際には、様々な問題を抱えている実習生も少なくありません。
例えば、長時間労働や低賃金、劣悪な労働環境、人権侵害などの問題が報告されています。また、失踪や不法就労に繋がるケースも後を絶ちません。
2023年には、ある縫製工場で働いていたベトナム人技能実習生が、月300時間以上の残業を強いられ、過労で倒れるという事件がありました。また、別のケースでは、建設現場で働いていたインドネシア人技能実習生が、賃金未払いのまま解雇され、困窮するという事態も起きています。
これらの問題の背景には、技能実習制度そのものが抱える問題点があります。例えば、監理団体や受け入れ企業による搾取や人権意識の欠如、実習生の権利保護の不十分さなどが挙げられます。
これらの問題を解決するためには、制度の見直しや法改正が必要です。具体的には、監理団体や受け入れ企業の責任を強化し、実習生の権利保護を徹底する、労働基準監督署による監視体制を強化する、相談窓口を充実させるなどの対策が考えられます。
外国人技能実習生は、日本の経済や社会を支える重要な存在です。彼らが安心して働ける環境を整備することは、私たちの義務であると考えます。
5.ベトナム人技能実習生を受け入れてみての感想
「ベトナム人技能実習生の可能性」
私が初めてベトナム人技能実習生を受け入れたのは、2019年のことでした。当時、ベトナム人技能実習生を受け入れるというのは、まだ新しい試みで、正直なところ不安も大きかったです。言葉の壁や文化の違いもあり、コミュニケーションに苦労することもありました。
しかし、5年が経った今では、状況は大きく変わりました。当初は戸惑いもあったコミュニケーションも、今ではベテランの技能実習生が新しいメンバーを指導してくれるようになり、円滑に行えるようになりました。
何よりも驚かされるのは、ベトナム人技能実習生たちの高い意識と能力です。彼らは非常に勤勉で、どんなに厳しい状況でも、決して諦めません。限られた資源の中で、知恵を絞り、工夫を重ねて、問題を解決していく姿には、いつも感心させられます。
柔軟な発想力も彼らの大きな強みです。日本人にはないような視点で物事を捉え、創造的なアイデアを生み出します。彼らの存在は、私たちの会社に新しい風を吹き込んでくれました。
ベトナム人技能実習生を受け入れてみて、改めて人との出会いの大切さを感じました。国籍や文化の違いを超えて、互いに尊重し合い、協力し合うことで、素晴らしい成果を生み出すことができるのだと実感しています。
卓話公開日 2025年 3月3日